夏はリゾート地として世界中から観光客を集めるスイス。毎年のバレエコンクール(ローザンヌ),刃物のビクトリノックス,連邦制・地域別言語主義などユニークな社会制度でも知られる「アルプス孤高の小国」ですが,世界屈指の美術品コレクションを擁することでも知られています。その多くは銀行や時計工業を母体とする民間財団(例えばバイエラー財団など)の購入によるもの。近世フランドル絵画からフランス・イタリアの宮廷画,キュビスム・フォーヴィスム・表現主義,第二次大戦後の現代芸術まで網羅した常設展示品の数々は,静かな佇まいの中に一点一点を印象づける凄味があります。
今月25日まで,同国北東部に位置するチューリヒ美術館で,彫刻家でもあったアルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)の大規模な回顧展が開かれていました。まるで鉄線のように細く研ぎ澄まされた人体彫刻のフォルムは一目で彼のものと思わせる形。他方で,よりキュビスム的な抽象を志向した立体作品もあります。
この秋,そのチューリヒ美術館を扱う本格的な企画展が日本の国立新美術館にやってきます。プレスリリースはこちら。
なお参考までに,隣のバーゼル市立美術館では,中世ヨーロッパにこの地で生まれ活躍したハンス・ホルバインのコレクションも必見です。こちらはホラー風の群像絵画に転じるフランドル地方の画家ジェームズ・アンソールの企画展。チューリヒ中央駅(Zurich Hauptbahnhof)から都市間高速鉄道(IC, TGV)で55分。
◎チューリヒ美術館(スイス政府観光局ホームページ)
http://www.myswiss.jp/jp.cfm/culture/museums/offer-Museums-ArtMuseums-218785.html