仕事方面のフォローがさっぱり追い付いていませんが,アメリカの学術出版協会 (SSP) ブログなどから耳寄りな記事を速報的に。
(1)シュプリンガーとマクミランとの合併合意(プレスリリース[2月1日補訂])
ドイツ学術出版の大手シュプリンガー(シュプリンガー・サイエンス + ビジネスメディア)が,マクミラン・サイエンス・アンド・エデュケーションとの合併に合意した旨を発表しました。パルグレイブ・マクミラン社はネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の親会社で,日本ではNPGとしてコンテンツを販売しています。エルゼビア・ワイリー・テイラー&フランシスと並ぶ新たな超大手学術出版社の誕生です。
(2)カリフォルニア大学出版局の新しいオープン・アクセス事業(プレスリリース)
アメリカ西海岸の大学出版を牽引するカリフォルニア大学出版局(UC Press)が,書籍(Luminos) と雑誌(Collabra)のオープンアクセス事業を同時展開しました。代表のAlison Mudditt 氏がインタビューに応えています。
筆者は書籍出版社に籍を置いているので,書籍事業であるLuminosの動画をご紹介。
オープンアクセスの概要は別のところを参照いただきたいのですが,前払い(“pay it forward”)――費用を出版前に著者側で負担する――というコンセプトを導入することで,出版社は「この本は専門的価値はあるがポピュラーでないから売れない」といった考え方から解放される,つまりコスト意識に捉われずコンテンツの学術的価値に焦点を当てた出版活動が可能になると指摘しています。
筆者の知る限り,コンソーシアム型でなく単体の出版社でこうしたコレクションを展開するのは稀です。一般的に言って規模のメリットが弱くなるからです。実際カリフォルニアの場合も,南アジア地域研究の分野で他大学出版局と共同したコレクションを展開しています。
既に雑誌(Collabra)はWaiver Fund を獲得し,モノグラフ(Luminos)についても資金源を募集中とのこと。今後の展開を注視したいところです。なおwaiver fund とは,一般的には契約における「権利放棄」ないし「(債務等の)免除」といった法律用語ですが,具体的な用例を調べると,低所得国向けのAPC免除スキームであるようです。前記のシュプリンガー社が展開する一連のプラットフォーム,BioMed Central, Chemistry Central, Springer Open で運用されていることが分かります。
(3)プリンストン大学出版局の図書館むけ絶版・既刊本コレクション(プレスリリース)
リリースは昨年(2014年)の7月。Princeton Legacy Library。同局の100年余に及ぶ出版史から特に評価の高い絶版本をオンデマンド出版するシリーズ。コンテンツの提供出版者には個別に書面での通達。