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学術出版:2017年を振り返る

虚と実のはざまで,双方の淡いを見極める間もなく過ぎ去った2017年。年の瀬に絡めて,印象に残ったことを振り返ってみたいと思います。

「内容なき実学」こそ虚学

よく学術の(というより,学術を扱うジャーナリズムの)世界では「実学」「虚学」という分類がなされます。曰く商学・マーケティング・工学・医学などの「すぐ役に立つ」分野は実学であり,当面役に立たない分野は無用の学(虚学)だと。しかし,「すぐ役に立つ」ものは,得てして適用範囲や耐用時間が短く,すぐ役に立たなくなる傾向もあります。また言葉尻を捕らえるようですが,有用か無用かという区別ならそのまま呼べばよく,当該分野の「存在としての虚実」とは無縁です。目先の有用性を超えた学術の普遍性・汎用性を踏まえるならば,むしろ「内容なき実学」こそ虚学,と実感するところがあります。

他方これは,あくまで学問の側から対象に接近する場合の実感にすぎません。学問とは場を隔てた諸々の分野に目を向けるならば,「人は見た目が100%」など「内容より外形」という傾向はますます強まったと言わざるを得ません。

資源を活かし,社会実装?

社学連携をめぐる語彙にも目を開かされた一年でした。少し検索をかけるだけでも,詳細な政策研究の成果が見つかりますが,資源を掘り起こして身にまとい,どこに立ち向かう(踏み込む)のか?平場の感覚からは,何ともいかめしい趣です。これとて,有用性という社会設計的思想が背後に見て取れます。既に予備的な検討を行った先駆的な記事もあり,来年以後,これらの語をつぶさに深く考えていきたいと考えています。

知のオープン化は更に加速

オープンサイエンス・オープンイノベーションという語が,昨年にも増して飛び交った一年でした。これに関しては筑波大学でのシンポジウム(11月21日),および情報知識学会がNIIで催した情報知識学フォーラム(12月2日)などで体系的な議論が提供されました。本ブログでも一度考えてみたことがあります。その背景・目的・意義は,来年以降も継続し考えることを避け得ないテーマでしょう。

更なる思考のヒントに,文献紹介

中庭光彦(2017)「創発から社会課題を解決 事業構想で促す地域政策」『人間会議』2017年冬号,78-83ページ→全文記事リンク

日比野愛子(2017)「地域資源を興す ローカル・イノベーション」『人間会議』2017年冬号,136-141ページ→全文記事リンク

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