2020年12月21日(月曜)18:30開演 アーカイブ動画URL https://www.youtube.com/watch?v=7xRHtOv66-M
2020年も残りわずかとなりました。本来ならばクリスマス仕立てではしゃぎたい時季ですが,時世に鑑み,明けない今を見据えつつ,一年を静かに振り返る曲を演奏したいと考えました。音そのものが醸し出す世界を尊重しつつ,選曲の意図,および作品の背景を理解する助けになればと,以下に解説いたします。
スクリャービン:エチュード集から op.8-2/ピアノの詩人・ショパンに近しい作風からキャリアをスタートさせたロシアの鬼才・スクリャービン。左手が3連符,右手が5連符を奏でるポリリズム(複合リズム)が特徴的な小品です。曲が進むにつれて広がる音域,全曲を一貫する流麗なパッセージが,世界を覆う苦境にも凛として立ち向かう人間の気高い意思を表すように感じ,選んでみました。
グリーグ:自作歌曲によるピアノ編曲集から「詩人の心(きみ知らず,永遠なる海の動きを)」op.52-3/ノルウェーの作曲家・グリーグはソプラノ歌手のニーナを妻に持ち,多くの歌曲を遺しました。この曲はデンマークの作家アンデルセンの詩に付した楽曲ですが,スクリャービンの楽曲と同じ流麗なパッセージでも,意思的にどこかへ向かう…というよりは,あてどなく寄せては返し,終わりを見せないかのようです。
グリーグ:抒情小品集 第8集から「農夫の歌」op.65-2/グリーグが生涯にわたり書き続けた66曲の「抒情小品集」から雄大な作風を持つ第8集からの一曲。素朴な民謡風のメロディが四声体で静かに歌われます。農夫という表題を離れ,激しく世界を席巻する災禍に対しての,静かな祈りを感じさせます。
シベリウス:樹の組曲から「樅の木」op.75-5/今月8日に誕生日を迎えたフィンランドの国民的作曲家・シベリウスの連作「樹の組曲」は,5つの曲全てにフィンランドで育つ木の名前が付けられています。終曲のこちらは,チェロの落ち着いた音色を思わせる独り言のようなメロディと,即興的な「間」が印象深い小品です。様々な対策が少しずつ進むものの,私たちの生活を決定的に元通りにするほどに,コロナ禍は収束を見せていません。いたずらに騒がず心を静めて暗闇が明けるのを待ちたい…選曲にそのような想いを込めました。
*参考リンク/今回,演奏した北欧の作曲家2人には全国団体があり,年間を通じて「弾く・聴く・学ぶ」にわたる様々な活動を展開しています(知る限り,日本スクリャービン協会はまだ存在しないようです…)。宜しければリンクを覗いてみてください。
◎日本グリーグ協会 / 日本グリーグ協会 – ホーム (facebook.com)
◎日本シベリウス協会 The Sibelius Society of Japan (sib-jp.org) / Sibelius Society of Japan 日本シベリウス協会 – ホーム (facebook.com)