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アカデミック・リテラシー (2) 世界レベルの研究をめざして

研究者・アカデミシャンは「象牙の塔に籠る」とも揶揄されるように、しばしば独りで活動するものと一般には理解されがちです。しかし21世紀の今は、専門分化とグローバル化の進展で、あらゆる分野に協働が求められまた可能になっています。その手段となる研究者交流を、どのように築いてゆけばよいのでしょうか。

社会科学分野の若手・中堅世代の研究者を対象に、広い世界でネットワークを築き、論文執筆や学会発表にチャレンジするための基本的な考え方や方法を解説するガイドブック。

中央経済社webサイトの書籍紹介文を引用

『企業と社会』という教科書を先だって刊行され、このテーマを代表する経営学者である谷本寛治さんの新著作。新型コロナ禍で出来た自粛期間を活用し、一気に書き上げられたという本書の特徴は三つ挙げられると思います。

第一に、論文の書き方(アカデミック・ライティング)に留まらず、論文出版後の効果的なプレゼンテーション技法、諸外国のアカデミック・コミュニティとの連携・交流をも対象に据えていること。大学院重点化にともない、古典的な論文マニュアル(Chicago Manual of Style APA Styleなど)を基にした、入門的な教科書の刊行こそ増えていますが、後二者をも対象に据えていることは稀です。いわばアカデミック・コミュニケーションを包括する実践的方法論といえます。

第二に、著者ご自身「遅いスタート」(16頁)と謙遜して語るように、若くして遂げた「成功」体験の披瀝とは一線を画する点です。苦労や違和感から得た実感に基づいた―—かつ教条的でない――筆致は、世界レベルの研究を目指す人々に具体的な示唆を与えてくれます。近年はメディア産業の急速化も相まって、あるとき目覚ましい躍進を遂げた研究者はスター扱いされ、同時に早くして言論界から忘れ去られる傾向も少なくありません。本書は谷本さんによる、台湾やドイツでの教員生活といった実体験(126~129頁コラム)に根差しており、研究者の生の声として、息長く読み継がれる厚みを宿しています。

第三に、人の非対面・非接触が求められた執筆時期とも相関すると思いますが、オンラインプラットフォームやバーチャルな場の積極的な情報提供です。コラムや脚注には、無料のeラーニング・プラットフォームElsevier Researcher Academy(本書21頁コラム), 研究者むけSNSの代表格 ResearchGate の諸機能(87頁)などが触れられています。今やグローバルな学術出版社もコンテンツの刊行に留まらず、研究者の名寄せ、研究者交流を促す専門セミナー運営など、人的資源を軸としたサービス提供に舵を切っています。書斎に籠り文献を漁るのみならず、専門分野同士の(時には専門分野を大きく超えての)交流を絶えず行い、変化をいち早く捉えて行動することも、現代のアカデミック・リテラシーの一つと言えそうです。

追記 谷本さんは独ケルン大学ビジネススクール(CBS)と恒常的にネットワークを築き、毎夏(通例は9月)、早稲田大学でジョイント国際会議「企業と社会フォーラム」を開催しています。その経験に紐づいた滞独日誌ともいえる著作に、Amazon Print on Demand で電子書籍として刊行された『経営学者のドイツ』があります。

谷本寛治『研究者が知っておきたいアカデミックな世界の作法—―国際レベルの論文執筆と学会発表へのチャレンジ』 中央経済社、2020年12月。


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