今年はなかなか暖かくならない「長い冬」ですが,先週末はようやく春らしい快晴でした。素晴らしい舞台のあと,美術にお詳しい同僚から紹介いただいた個展へ立ち寄り。その感想というか,作家さんとの談話で印象に残った一言を――
洋画(現代油画・シュールレアリズム)を教えている父から「素人は前景の華やぎをみる。プロは背景の出来をみる」みたいなことを昔から聞かされており,じゃあ,玄人はだしで背景をみてみるか,と分からないなりにがんばってみたところ,いろいろな感じが目に飛び込んできて面白い。
否,強いて目を向けずとも,この方の画面からは,前にたたずむ花と絶妙に融け合った質感の個性が感じられました。定家さんは滋賀県生まれで,京芸日本画科のご出身。京芸といえば日本画の分野では屈指の難関。センスを裏付ける技巧と構成力がたしかなのは言うまでもありません。
その日は百貨店の閉店も迫っており,観に来た客は僕一人。15分ほどで一通り回ると,御本人が歩み寄ってきて声をかけてくださる。初対面(しかも急な立ち寄り)にもかかわらず,洋画との絵具の違い(日本画は天然色を使い,種類が少ない),インスピレーションの源などにわたりお話が弾む。絵描きさんて背景の感じを大事になさいますよね,と尋ねたところ,
「ええ,背景のマチエール(matière; 材質によってつくり出される美術的効果)がしっかりしていないと,上物(うわもの)をどんなに描き込もうとしても締まらないものなんですよ」
とのお言葉。
なるほど,背景の引き締めが大事…!
絵画にかぎらず,人生の日々いろいろなことにも通じそうな。
ご本人のブログにも美しい写真と共に展示レポートが記されています。
◎定家亜由子さんブログ「お花暦 日本画の日々徒然」2013年5月記事