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初夏の三鷹に聴く、荘重な響き

6月は三鷹にある国際基督教大学へ2度も足を運ぶ機会がありました。とても今更ながら(書いている今日は夏真っ盛りな山の日…)振り返りを。

ICU礼拝堂とパイプオルガンの歩みは、宗教音楽センター公式サイトが簡潔かつ詳しいです。オーストリア製のリーガー・オルガンを備えた日本屈指の奏楽ホール。創設50年を超える佇まいは、外観こそモダンながら静かな重みを感じさせます。

国際基督教大学・礼拝堂の外観。豊かな緑にモダンな十字架が際立ちます

山口綾規オルガンコンサート(6月10日)
山口綾規さんというと、ジャンルに捉われない選曲と明るい解説に定評があり、最近ではNHK朝ドラ「エール」にもご出演など、ポピュラー感の強い方という印象を抱いていました。ところが藝大院時代にはA. シェーンベルクのような前衛的かつ晦渋な作品に取り組まれていたことを今回初めて知りました。十二音音楽の始祖と言われつつ本曲は調性がありますが、オルガン自体が脈打つような重々しい曲調。前後もJ.S. バッハとJ. ブラームスでガッチリ固め、まさに盤石な90分(鍵盤自体も重そう…)。

【前半】
J. ブラームス:11のコラール前奏曲集 Op. 122より「装いせよ、我が魂よ」
J. S. バッハ:いと高きところにいます神にのみ栄光あれ BWV 675
A. シェーンベルク:レチタティーヴォによる変奏曲 Op. 40
【後半】
J. S. バッハ:18のコラール前奏曲集より「装いせよ、我が魂よ」BWV 654
J. S. バッハ:前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV 552

礼拝堂に納まるリーガー社オルガン(ICU宗教音楽センターwebサイトより)


水永牧子チェンバロコンサート(6月24日)
ICUに秘蔵されたイタリア製チェンバロを佐藤望先生が見出し、修復家の協力を得て甦らせ、味わう企画。新型コロナによる中断を挟んだ3年半越しという事情もあってか、2階席まで埋まる盛況。パーセル、D. スカルラッティ、J.S. バッハと幅広い作品が弾かれた中、個人的にはスカルラッティの切れ味が鮮烈。高音から低音まで自由に駆け巡るドライブ感はチェンバロならではです。
ゲストの川口聖加さんは聴き馴染みのスタンダードナンバーで華を添える。会場の、ともすれば豊満すぎる響きを活かしつつ、座っての歌唱を交えて旋律線をクッキリ描き出し、クリアさと細やかな表情付けが印象深かったです。アンコールは国際情勢に鑑みて、ウクライナの歌曲一曲と「カヴァティーナ」(映画『ディア・ハンター』のテーマ)。

曲目は 宗教音楽センターwebサイト上のコンサートチラシ

筆者はいつもの前列上手側から聴きました。奥に見える木目調の直方体はオルガン椅子の背面